ママと支援者をつないでいく。
もっと子育てを楽しめる社会を目指して
トモイクメンバー インタビュー
子育てに悩むお母さんをサポートすることをミッションとして発足した、「ともいく相談サービス」。
このインタビューでは、トモイクを支えるメンバーの素顔や、サービスに込めた想いに迫っていきます。
研究者でありながら、公認心理師としても尽力する、異色の経歴をもつ髙瀨堅吉さん。
生涯発達支援、心の病気や性差の生物学的研究、シチズンサイエンスを活動の3本柱として注力。正しい子育て知識の普及を目指した、さまざまな活動に取り組んでいます。
コロナ禍をきっかけに知ることとなった、"今、困っている人たち"を支援したいと語る、髙瀨さんの想いに迫ります。
コロナを機に感じたママ支援の必要性
コロナが流行り始めた頃、「高齢者とママたちがすごく困っている」というニュースがメディアで取り上げられているのをよく見かけていました。
その報道を見て僕が思ったのは、いまこの時代で本当に困っている人たちをサポートできないかな、ということです。
そこで臨床心理学を勉強しなおして実践経験を積み、公認心理師になりました。
いまは、心を生物学的に研究することと、困っている方に対して心理学を活用して支援することの両方の活動を行っています。
トモイク事業のことは支援活動をするなかで知り、ヴィジョンに共鳴したので、知人経由で竹村社長に「一緒にお仕事させてください」とお願いしました。
だからサポーターというとおこがましくて、僕は押しかけサポーターみたいな感じですかね(笑)
最近では、共育スペシャリストを目指す方が心理学的な知識を学ぶための教材作成をしています。
社会を変えるのって本当に難しいなと肌身に感じていて。
なかなか変わらない中で、まずはやれることからやらなきゃいけないと考えています。
その中でもトモイクがやろうとしている、潜在保育士・潜在助産師さん*たちをオンライン育児相談員として登用し、社会にでていくためのルートをちゃんと確立する、というのは、本当に素晴らしいヴィジョンだと思います。
そしてそのヴィジョンを実現したら、誰もが活躍できる、そして困っている人たちが欲しいサポートを受けられる社会が必ずやってくると思っています。
保育士、助産師などの専門資格を有しているが、現在は職を離れてしまっている人材のこと。
もっと多様な子育て環境が作れないだろうか
わが家は子どもが3人います。長男が中1、下は少5の双子の女の子。2歳差兄妹です。
長女と次女ができたとき、うちは毎日お祭り騒ぎでした。
実験が平日に終わらないときは、散歩がてら、土日に息子を大学に連れて行っていました。
当時息子は2歳。息子を背中に抱えながら、実験をしたこともありました。
大変でした、あのときは…(笑)
詳細な記憶がないですね。それくらい忙しかったです。
そんなエピソードがありつつも、実は、僕にはまとまった育休をとった経験がありません。
研究者がキャリアを休止しにくい職種である背景もあって、妻が子育ての中心的役割を果たし、僕は外で働きながらできることをする、というかたちで子育てをしていました。
妻のキャリア形成が再始動したのは最近です。
妻はそれで満足していて、それならそれで良い、という思いと、男性が働き、女性がキャリアを休止して子育てをするというパターンしかつくれない社会ってなんだろうな、という疑問が常に頭の中にありました。
それに、もっともっと子育てに関わりたかったなという自分の思いもあいまって、もっと多様な子育て環境が作れないだろうか、そのために自分のこれまでの活動を活かせないだろうかと、強く思うようになりました。
人は、なりたい自分になれることが幸せなんだと思っています。だから、少しでもママ達が「なりたい自分になれる」選択肢を増やして、それを実現する中で、子育てができるようになればいいと、心から思っています。
心の定期健診をもっと気軽に
大学生の心の相談をやっていて感じるのが、大きくなって、お子さんが問題を抱えているケースは、修正しづらい、ということです。
子どもが小さい頃は、家庭環境から絶大な影響を与えられるんですよね。
こんなご時世で、すごく不確実なことが起きているなかで、ママたちが孤立孤独を感じていたり、心を病んでいたりすると、お子さんがその影響をダイレクトに受けることになります。
すると、お子さんたちが大きくなったときに修正不能な状態になってしまうことがある。
なんかしないとまずいな、と思っています。
とはいえ、実際に育児相談にくるママのハードルが、どれくらいあるのか気になるところではあります。
専門機関で相談する人=ダメな人、というラベル付けが無意識にされてしまうみたいで、周囲の目を気にして避けてしまう人もいるようです。
できれば、心が健康な状態のときに相談にきてほしいです。
そうすることで、問題をまだ小さい状態で早期発見できたり、心の不調の予防ができるからです。
もっと気軽に相談してくれたら、すごくいいのになと思っています。
相談は「新しいストーリーをつくる作業」
悩みって、「こう考える」という新しいストーリーを自分の中で作れなくなっているから、どん詰まってしまうんですよね。
相談というのは、新しいストーリーを一緒に作る作業、というふうに言われています。
相談者と面接者が「これはこう考えてみて」「こんなふうに進めてみてはどうですか?」と話し進めていくうちに、やがて解決していきます。
僕たち専門家は、ご本人が抱えている悩みについて寄り添いつつ、どうやったらその悩みを、前に進む推進力に変えられるのかということを考えて相談にあたっています。
状況によってはご本人に寄り添うことだけが解決策の場合もあるのですが、人は内在的に前に進む力が秘められていて、今はそれが何かしらの理由があって阻まれている、というのが僕の考え方です。
少しでも前へ。それをいつも心がけています。
メッセージ
最後に、お悩みをもつママ、共育スペシャリスト、それぞれにむけたメッセージをお伝えします。
今、悩みがあるママへ
世の中のママたちが少しでもハッピーになれるような支援をしていきたいと思っています。
子育てには、大変なときがありますよね。
どの時代も子育ては大変だったと思いますが、特に今の時代は、昔よりも地域や血のつながりが薄くなっていて、子育てが孤独の作業になってしまう傾向があります。
だからこそ、いま、「一緒に子育て」することが大事なんだ、と僕は思っています。
祖父母、曾祖父母、地域の人たち…。今までそういう大きな規模でやってきた「みんなでする子育て」を大切に想って、続けていこうとしている人たちと、一緒になって子育てをしていくのが、次の世代のチャレンジなのかなと考えています。
僕も3児のパパですが、子育てを楽しめるように「一緒に子育て」をしていきましょう。
共育スペシャリスト*の皆さんへ
「私にできるかしら?」と自信を持てない方に特にお伝えしておきたいのは、自信のなさ=適性ということです。
面接者として「大丈夫だろうか」と緊張していると、相談者との関係性が対等になります。
これが結構重要で、対等な関係になると、相談者が「この先生はすごく自分に共感してくれているんだ」と思ってくれたりするものです。
相談は、する側もされる側も迷いの中からスタートします。
自信がなくて踏み出せない方は、その一歩を僕たちと一緒に踏み出してもらえると嬉しいです。
心理学の知識を身につけ、育児相談をおこなう、保育士や助産師などの資格を有した育児専門家のこと。
Profile
髙瀨堅吉
公認心理師、臨床発達心理士、中央大学文学部教授。
生涯発達支援、心の病気や性差の生物学的研究、シチズンサイエンスを3本柱として活動中。
3人兄妹を育てる父親。