親子が過ごしやすくなる支援を。
専門家だからできること
トモイクメンバー インタビュー
子育てに悩むお母さんをサポートすることをミッションとして発足した、「ともいく相談サービス」。
このインタビューでは、トモイクを支えるメンバーの素顔や、サービスに込めた想いに迫っていきます。
母親支援や子育て支援を専門領域として活動する、臨床心理士の上間春江さん。
私生活では、発達に偏りのある2人の兄弟を育てる母親でもあります。
困ってるお母さんたちの役に立ちたいと日々まい󠄀進する上間さんに、心理士の役割や、相談者との向き合い方で大事にしていることについてお聞きしました。
困っているお母さんの役に立ちたい
私が心理士になった理由は2つあります。1つは、心理学に興味があったこと、2つめは、子どもが好きで、子どもに関わる仕事がしたかったことです。
教育・子育て領域でのカウンセラーとして職を得て、臨床心理士の資格も取得しました。
普段は、行政、学校や保育園、企業等から仕事を請け負っていて、0歳から20歳までのお子様と、お子様にかかわる支援者(保護者、教師、保育士等)へのサポートをしています。
トモイクとのかかわりは、2021年5月頃に、「新規事業立ち上げにあたって、参加してほしい」と打診をいただいたのが、はじまりです。
「困っているお母さんの役に立ちたい」という点で、トモイクと私の想いが一致したので、事業に参画しました。
現在、トモイクでは、子育て相談botのテキスト監修や、保育士用の研修動画作成の業務を担当しています。今後は、共育スペシャリストの育成を担当する予定です。(※2022年5月時点)
大変だった子育て中に、心を照らした息子の行動
子どもを出産する前から子どもに関わる仕事をしていて、母親になる際には、子どもの気持ちに寄り添える「いいお母さん」になりたいと思っていましたし、なれると思っていました。
ですが、実際に始まった育児生活では、私の理想はあっさり敗れ、生まれたばかりの言葉の通じないわが子へのかかわりに四苦八苦の日々。加えて、発達の偏りによる育てにくさもあり、子育てがとにかくうまくいかず大変でした。
産後しばらくは、これまで相談で出会ってきたお母さんたちのお顔が浮かび、「みんなこんな大変なことを乗り越えて、相談にくるまでの年齢に育ててこられたのだなぁ」と思ったら、これまで自分が偉そうにアドバイスしてきた過去を詫びたくなるような気持ちにさいなまれることもありました。
わが家の息子2人は、発達に偏りがあり医療のサポートを受けています。
発達に偏りがあることで、普通の子育てではうまくいかないことが多い息子たち。みんながすんなりできることが、ひと手間ふた手間かけて指示を出さないと、できないこともあります。
どんな指示をすると、うまくできるのか?
創意工夫の毎日ですが、私が息子にした支援を、ときどき息子が私にしてくれることがあります。
配慮のある子育てをすると、子どもが親を助けてくれることもあるのかと、心が温かくなるのを感じます。
専門家への育児相談はハードルが高い?
専門家に育児相談をしたことはありますか?
ほとんどの方は、「いいえ」と答えられると思います。
内閣府がおこなった調査*によると、気軽に育児相談をする相手として、「親・家族」の回答がもっとも多く、次いで「友人・知人」があげられています。(※出典:平成20年度 少子化施策利用者意向調査の構築に向けた調査報告書)
専門家へ相談するという回答が少ないのは、専門職に頼るという経験自体になじみがなかったり、専門家へ育児相談することに、なんとなく抵抗を感じて避けてしまう方もいらっしゃるからではないかと予想しています。
また、専門家に相談というと、「相談内容を考えてから行かないといけないのでは?」と身構えてしまうかもしれませんが、安心してください。
ともいく相談サービスでは、心理学の専門的な解釈をお話しするわけではありません。
まずはお母様に、とっかかりのエピソードを1つ2つお話しいただき、日々の生活のしにくさや、負担感を思い出していただきます。
事実レベルで困りごとを聞き起こして整理するうちに、保護者側の対応で「うまくいくパターン」と「うまくいかないパターン」がつかめてくるので、解決するために、うまくいくコツや具体的になにをすればいいのかを一緒に考えて、アドバイスします。
いっぱいいっぱいで何かをする余裕がない、もしくは、とにかく話を聞いてほしいと望まれるお母様には、助言せず、傾聴する、ということもしています。
助言がほしい、ただ話を聞いてほしい、どちらもしてほしい…。
その日のお母様のニーズを聞き、あるいは汲み取るのが専門家です。
気負わず、専門家を頼ってみてください。
ご自身とお子様の”乗り越える力”を信じて
わたしは、0歳から20歳までの幅広い年齢層の子をもつ母親を対象にしたサポートをしていますが、どのお母様にも共通して言えるのは、みな、お子様を大切に思い、精一杯がんばっておられる方ばかりだということです。
だからこそ、まわりと違うわが子の個性や、まわりと同じようにできない状況(不登校、発達障がいがあるなどの問題に直面したとき)に、とても悩み不安に思う様子を見てまいりました。
子どもを思う気持ちが強いからこそ、思うようにいかない時にご自身やお子様を責めたり問題視したりしやすくなりますが、そう思いたくなる時こそ、まずは、これまでご自身やお子様ががんばってこられたこと、日々よくやっていることに意識を向けなおして、自分たちの良さを伸ばす方向で、気持ちを切り替えてみてください。
そうするとやがて、みなさん、自分たち親子の中にある、問題を乗り越える力がちゃんと出てきて、良い方向に進んでいかれます。
その瞬間を引き出すことが私たち心理士の役割であり、かつ、状況を乗り越えて自分らしく歩まれる姿に立ち会えることが、この仕事をしていて、よかったなと思える瞬間です。
ご自身やお子様の力を信じて、子育てのいろんな問題を乗り越えていっていかれたらと思います。
相談して解決したという経験は好循環をつくります
これまで出会ってきたお母様たちは、無意識にもっている理想の母像と現実の自分のギャップに落ち込んでしまっている方が多いように感じています。
ひとりでは、問題解決の手がかりが得られず、悪循環に陥ってしまうのなら、専門家に相談してみてください。
専門家と一緒に、状況を好転する手立てを考えていきましょう。
相談を通して、自分を責める気持ちを手放し、自分をねぎらえるように変わっていく…自分自身を受容していくことが、ありのままのお子様を受け止める土台となります。
そして、相談することで「解決した」「良い変化があった」という経験が、将来の子育てステージの中で、いろんな支援者に出会えていける信頼感に繋がっていくといいなと思っています。
メッセージ
最後に、お悩みをもつママ、共育スペシャリスト、それぞれにむけたメッセージをお伝えします。
今、悩みがあるママへ
ひとり煮詰まって悩みが深くなるときは、子どもにあわない対応をつづけてしまっているときです。
悩み続けるよりも、保護者側の対応を変えてしまったほうが解決がはやいかもしれません。
子育て経験が少ないときは、対応を変えるという手段を思いつかないこともあるでしょう。
困ったときは、ともいく相談サービスで育児専門家にアドバイスを聞いてみてください。
良い対応ができる選択肢を増やすきっかけになりますよ。
共育スペシャリスト*の皆さんへ
子育て支援へされる方へは、「親子どちらにも寄り添う」ことを期待しています。
子どもの気持ちを理解するのが得意な方は、ともするとサポートが子ども中心に寄ってしまうことがあります。
子どもに寄り添えていない母親に対して、つい指摘してしまいたくなることもあるかもしれませんが、母親も急に親になれるわけもなく、心にキャパシティーやゆとりがないときもあります。
母親側の状況や現実を理解しつつ、親子が過ごしやすくなるような支援のアイデアや対応方法を一緒に考えていけるような観点で、相談にのっていただければと思います。
心理学の知識を身につけ、育児相談をおこなう、保育士や助産師などの資格を有した育児専門家のこと。
Profile
上間春江
臨床心理士、心理カウンセラー。子育て支援・教育相談に携わり、10,000件以上の悩み解消に寄与した実績をもつ。専門分野は、不登校・発達障がい・特別支援教育・子育て支援・組織内外の連携協力の構築など。